リフローのやり方

5E05 s17033 岡田航 2021.10  作成J山下 2021.12 微修正

リフローとはペーストはんだをもちいて表面実装部品をリフロー炉で加熱してはんだ付けする方法です.

ピッチが狭い部品や,はんだごてによるはんだ付けが困難な部品のはんだ付けに適しています.

リフローを使用することでプリント基板に表面実装部品を比較的容易に実装できます.ここでは,リフローやり方をまとめます.

注意

表面実装部品はサイズからもリフローで実装するのが最適ですが,マイスターで使用可能なリフロー炉を使用して両面に実装することはできません.
両面実装する
場合はSMD用接着剤を使用して裏面の実装を行うことがありますが裏面に背の高い部品や重い部品があるとそれでも不完全で失敗する可能性があります
両面に部品を実装したい場合は部品を分別してリード部品だけ裏面に実装するといった方法や裏面の部品点数を減らして必要最小限の部品を手はんだで頑張るのが現実的だと思います

以上のことから部品の両面実装は難易度が非常に高いため初めてで挑戦するのはやめておいた方が無難です
それでも試してみたい場合は,マイスター
で数回基板を作った後試してみるのがよいかと思います

用語の説明

このページでは,初めてリフローを行う人のために,まず用語の説明をします
用語はその都度なるべく説明を行いますが,詳しくは各自で調べてください ここなどが参考になります)

表面実装(部品)

いわゆるリード(足つき)部品や,DIPのICと違い 基板上に載せるだけで実装する(基板を貫通するように実装しない)方法, およびそのように実装される部品.
SMT(Surface Mount Technology)やSMD(Surface Mount Device)ともいわれる.

パッド

表面実装部品の足と電気的に接続される部分で 基板表面にある銀色(HASLの場合表面仕上げにより色は異なりENIGなら金色)の部分.
足つき部品の場合は足を入れる穴(スルーホール/PTH)に部品を通してはんだで接合するが,SMDの場合はパッドに置いてペーストはんだで接合する.

ステンシル

基板上にペーストはんだを塗るときに使う薄い金属板
ペーストはんだを塗りたい位置(パッドなど)に穴が開いており,基板に位置合わせをしてステンシルの上から全体にはんだを塗りつけることで,穴の部分にステンシルと同じ厚さだけペーストはんだを塗布できる.
メタルマスクともいわれる

PCB製造時に同時に製造するので,発注時はガーバーにステンシル用の指示ファイル(.GTS, .GBS)があることを確認すること.

ペーストはんだ

リフローではんだ付けをする際に使うはんだのこと.
中身はペースト状のはんだではんだの粒と液体状のフラックスの混合物.
クリームはんだともいわれる.

リフロー

ペーストはんだを外部からの熱によって溶かすことではんだ付けする方法.

リフロー炉

リフローではんだ付けを行う際に基板全体を加熱する機械.
工場では大型のものが使われリフローオーブンやリフローマシンと呼ばれることもある.
個人で熱電対とオーブントースターを用いて自作する方法やホットプレートを手動で制御する方法もネット上では紹介されているが,半田を溶かす温度まで均一に加熱し,融点を超えてはんだが十分溶けた状態から均一に温度を下げるための緻密な温度制御が必要になるため,専用の装置を使用したほうが良い.温度制御を誤るとはんだ不良の原因となる.

型番:T-962
ユーザーマニュアル(英語)


足つき抵抗とチップ抵抗の比較

パッドとスルーホールの比較

ステンシル

ペーストはんだ

リフロー炉

リフローに必要なもの

基板

  • 実装する基板

  • その基板を固定するための基板

実装する基板の余った分でOK
使ってない基板があればそっちがベスト

ステンシル

基板発注時に注文するのを忘れずに
ネット上では自作をしている人もいるが難易度が高くコストも高いので必ずステンシルを注文すること.

ペーストはんだ

はんだ比はSn63:Pb37がおすすめ.
買った後は冷暗所(冷蔵庫とか)で保管すること.
シリンジ入りタイプもあるが押し出し量が少なく ペーストはんだを比較的大量に使うステンシルでの塗布には向かない
パッドの数が少ない場合やリフロー後のはんだ付け不良か所の修正にはシリンジ入りも便利

ペーストはんだを混ぜるヘラや棒

特に決まった工具があるわけではないが,混ぜるヘラか棒があるととても便利.
ペーストはんだを混ぜる作業と,ペーストはんだをステンシル上に必要量だけ移動する作業をまとめて行うことができると
効率的に作業を進められる.
指がはんだまみれになるのを許容すれば指でも不可能ではないが,手を洗ってもなかなか落ちないので覚悟が必要.
これなどはサイズ感がちょうどよい.

テープ

養生テープなど.基板を平面にステンシルを基板に固定できるものなら何でも可.

スキージー(スクイージー)・ヘラ

クリームはんだをステンシル上にのばすために使用する.
不要となったカードなどでも代用可能.

ピンセット

一般的なピンセットでも良いが,逆作用ピンセットを使用すると部品を置くときに疲れない.
1608サイズでも素手での配置は不可能なのでピンセットは必須.

BOM(部品表)

部品番号と部品の名前や値が書かれた一覧表.
一般的なCADであれば出力できるはずなので,印刷して手元でチェックしながら作業すること.

無水エタノール(IPA)

掃除に使う.
IPAがない場合は消毒用のアルコールでも代用可能

紙ウエス(キムワイプ)

掃除に使う.
使用時に繊維が出にくく使い捨て出来るものがおすすめ(布やティッシュペーパーは非推奨).

スキージー(カード)と

ペーストはんだを混ぜるヘラや棒

逆作用ピンセット

掃除道具

(IPA・無水エタノール・キムワイプ)

あると便利なもの

以下は「あると便利」なのでできるだけ準備するとよい.なくても作業は可能.

ルーペ

部品を置く際に,基板の部品番号見たり,1ピン指示見たりするときにあると便利.

回路図

あまり使用しないが部品の役割が気になったときなど傍にあると便利.

配線図

部品の位置がわからないときに,パターン追って割り出せるので便利.

コンピューター

CADで回路図・配線図・BOMを表示できると効率的に作業を進められる.
ただし手がペーストはんだで汚れているとPCを操作しづらい.

ライト

部品の刻印を見る際など何かと使えるので近くに置いておくと良い.
照明が強ければスタンドライトなどでも代用可,なくても問題なし.

バキュームピック

できればワンタッチの電動タイプがあると便利.

はんだごて

加熱不良の追加熱やブリッジの修正時に必要.
こて先は追加加熱用のCかブリッジ修正用のKあたりがおすすめ.
部品のサイズによってはオーソドックスなBよりIの方がやりやすいこともある.

ヒートガン・スポットヒーター

加熱不良が広範囲の場合ははんだごてよりヒートガンやスポットヒータを使ったほうが良い.
広範囲ではなくてもスポットヒーターなら対応できる.

フラックスクリーナー

レジストが白の場合,フラックスの黄ばみが目立つので消したい人にはクリーナーを使用すると良い.
無水エタノールで代用可.

スポットヒーター

フラックスクリーナー(スプレー・ペン)

リフローやり方

リフローの流れ

まずは全体の流れを説明します 詳細は後述します.

  1. 基板を固定する

作業中に基板がずれないように固定する.

  1. ステンシルを固定する

ステンシルの位置を決めて固定する.
ここでずれると仕上がりでブリッジなどの不良が出る可能性があるので慎重に.

  1. ペーストはんだ塗布

パッドにペーストはんだを塗る.
多すぎても不良になり,少なすぎても接合しない.

  1. 部品実装

ペーストはんだを塗ったパッドの上に部品を置く
ここで厳密に位置合わせする必要はなく,多少のずれははんだが融けた際にある程度修正される.

  1. リフローはんだ付け

リフロー炉ではんだを溶かして部品を基板上に固定する.
炉の特性やはんだの特性によって様子を見ながらやる.

  1. 目視確認

ブリッジやはんだ不良がないか確認する.
リフロー炉には加熱ムラがあるので大体どこかしらに不良が出る.

  1. 修正

はんだが固まっていないところにはデータシートの過熱に関する注意の範囲内でスポットヒーター・ヒートガン・はんだごてなどで追加熱をする

  1. 完成!

大まかな流れは上の通りです
各項目については以下に詳しい説明を記載しますがやり方は人それぞれで,インターネットを調べるといろいろな流儀があります
ここでは,できる限り一般的な方法を記載するように心がけていますが,インターネット上のほかの記事とは主張に違いがあるかもしれません

基板の固定

基板を作業場所に固定します 固定する際は同じサイズ・厚さ(多くの場合,サイズ100x100mm 厚さ1.6mmです)の不要な基板を数枚使用すると便利です.右の写真は,黒い基盤が今実装したい基板で,赤い基盤は固定用の不要な基板です.

実装したい基板の外形を囲うように不要な基板を使って固定します外側の固定用の基板は養生テープなどで動かないようにしっかりと固定します

個々の固定が甘いとステンシルがずれてうまくペーストはんだが塗れません複数枚作る場合は2枚目以降の実装でもステンシルのズレが起こってしまいます

固定するとき同じ厚み(1.6mmとか)で製造された基板を使用しましょう.後の工程ではんだを塗布する際に,ステンシルが平らになっている必要があるので,同じ厚みで固定することが重要で

ステンシルの固定

ステンシルを固定します
ステンシルを固定する際は斜め上から見ても基板のレジスト(はんだがのせられない部分.写真の基板の場合は黒い部分.)が見えなくなるように慎重に位置合わせをしてステンシルの1辺(上側を推奨)を固定します

ステンシルは一辺のみを固定することで,めくるだけで基板を取り外すことができ便利です.同じ基板を2枚以上作成する際も基板を入れ替えて作業できます.

塗る際に失敗する可能性もあるのでしっかり固定しておくとズレもなくなり後々楽できます


ステンシルの位置合わせを楽にする小技

基板固定用の通し穴(M3用Φ3.2が一般的)と同じサイズの穴をステンシルの穴指示レイヤに入れておくと 基板固定用の穴にΦ3.2の棒を刺してステンシルを固定できます
ただし
部品が穴から近い位置にあるとペーストを塗るのが難しくなります

ペーストはんだ塗布

ペーストはんだを基板に塗ります

ペーストはんだは通常冷蔵庫などの冷暗所で保存します
時間がたつと乾いて固くなってしまうので 固くなってしまった場合はフラックスや無水エタノールなどを少し追加して様子を見てみるとよいです使う前には必ず良く攪拌(かくはん)します

ペーストはんだは少ないと十分に接着されず,多いと近隣パッドとショートする原因になります 適正量を塗るためには下の手順に沿って作業するとよいです

  1. (写真1枚目)ペーストはんだをステンシル上部の何もないところに十分な量を盛る(多少多い分には問題ないので少ないよりかは多い方がいい)

  2. (写真2枚目)スキージー(ヘラ,またはプラスチックのカードなど)に力をかけて曲げ押し付けるようにペーストはんだをすべてのパッドに塗る.右写真のようにかなり強い力で押し付けた方がうまくいく.

  3. (写真3枚目)はんだが足らない場合は,再度上部にはんだを盛って,もう一度2.を繰り返す.右写真3枚目は,左側が塗り切れなかったので,もう一度上部にはんだを盛ったところ.

  4. (写真4枚目)スキージーを立ててパッドの上に余っているペーストはんだをこそげ落とす

  5. そっとステンシルをあげて基板を確認する

  6. 全てのパッドにしっかりとペーストはんだが塗布できていることを確認したら,そっと基盤を取り出す.

  7. 固定用基板,スキージー,机に残ったはんだはエタノールやIPAでよく掃除をする.

部品の配置

ペーストはんだを塗った基板に部品を乗せます
マンハッタン現象※ を防止するためにも部品はすべてのパッドの上にきちんと触れるように置きます 小さい部品は多少ずれていてもはんだが融ける際に部品が動いてある程度整列されますICなどの大きめの部品はしっかりと位置合わせをするようにしてください.

マンハッタン現象とは
チップ抵抗などの片側の電極だけがはんだが先に融けて持ち上がってしまい縦になる(またはもう一歩の電極がはんだに触れない程度斜めになる)ことではんだ不良となってしまう現象.
部品実装時に不良がなくても加熱時のムラなどによっておこることがある.

部品を配置する際の注意事項

表面実装部品の多くは非常に小さく,部品だけを見てもどの部品か判断できないものも多くあります.

部品は必ずファイルなどに綺麗に整理し,配置する際は手元に,部品一覧,配置図,(できれば回路図)を置いて一つ一つチェックしながら配置してください.

また,ダイオードなど極性が存在する部品もあります.極性をしっかり確認して間違えないように配置してください.ここで間違えるとリフローした後に手はんだで付け直すのは比較的困難です(部品によっては不可能ではないですがかなり難しいです).

リフロー

リフローはリフロー炉に部品を実装した基板を投入して,加熱曲線(過熱による温度上昇と冷却による下降の曲線)を決めたらあとは自動で行います
ペーストはんだの材質によって加熱曲線を選ぶ必要がありますが詳しくはリフロー炉の使い方にまとめているのでそっちを見てください
一般的なSn63:Pb37のペーストはんだであればwave2で問題ありません
スタートしてから7分前後で終わります
加熱中は小窓から基板の様子を確認できます

加熱中は内部の紙テープ?が異臭を放つのでしっかり換気しましょう.部屋の扉を開けて外で待機してもよいですが,必ずリフロー炉からは目を離さないでください.
終了後はブザーが鳴るので ブザーが鳴った後は本体が熱くなりすぎていないことを確認してから扉を開けて取り出します

目視確認

完成した基板に問題がないか目視で確認します

確認のポイント

  • はんだがない

  • はんだが融けていない

  • 部品がパッドに乗っていない

  • 部品がずれている

  • パッド同士のショート(ブリッジ)

修正

目視確認で問題があった場合はその個所を修正します

修正箇所と修正方法

  • はんだがない

    • 手ではんだ付けする

    • 無理そうならシリンジ入りペーストはんだ&ホットエア

  • はんだが融けていない

    • ホットエアやはんだごてで溶かす

  • 部品がパッドに乗っていない

    • 中途半端に留まっているところのはんだを除去しやり直す

  • 部品がずれている

  • パッド同士のショート(ブリッジ)

    • はんだごてとはんだ吸い取り線などで少しはんだを減らす

    • K型の小手先で引き切る

はんだが融けていない(赤丸の部分)

部品がずれている(大げさな例)

同じ基板をもう一枚作る前に

ステンシルの掃除

一度ステンシルでペーストはんだを塗布すると ステンシルの裏にペーストはんだがついて次の基板に余分なペーストはんだがついてしまいます
ペーストはんだはきれいに落とすのが難しく非常に厄介ですが,頑張ってステンシルを掃除してから次の基板にペーストはんだを塗らないと仕上がりの品質が悪化します.