基板発注について

【Special Thanks】以下の情報は2021年度に5E岡田航君の協力で作成されています.

基板製造業者へ基板を発注する

電子基板(プリント基板)製造には,大きく,

  • PWB (Printed Wired Board):部品実装前の配線のみプリントされた基板

  • PCB (Printed Circuit Board):部品が実装され動作する状態の基板

の2種類があります.業者によっては異なる呼称で記載されていることがあるので注意が必要です.例えばElecrowの場合は,PWBの製造をPCB Manufacturing,PCBの製造をPCB Assemblyと呼んでいます.マイスターでは,原則としてElecrowに発注しますので,このページでもPCB Manufacturing (PCB-M),PCB Assembly (PCB-A)と記載します.

最近では中国系の業者がPCB-Mを5USD/10枚程度と非常に安価に製造してくれますので,マイスターや卒業研究などでもよく利用しています.少し複雑な基板になると,ユニバーサル基板を使うよりも早く正確に実装できます.

基板の発注には基板製造業者に対して製造にかかわるパラメータを伝える必要があります.このページでは,それらの決め方の参考情報を記載しています.※間違いがあるかもしれないので見つけたらマイスター担当教員まで連絡をください.​

ElecrowのPCB-M発注ページ

以下はElecrowのPCB-M発注ページです.以下各種パラメータについて解説します.

概要(まとめ)

以下に詳細を記載していますが,全部を読んで理解するのは大変です(もちろん基板発注を行うチームは,本ページに記載されている内容をすべて理解してから設計に入ることが望ましいです)

そこで,まず最初に,プリント基板を発注する際に必要となる一般的なパラメータの概要を示します一般的な両面のプリント基板を発注したい場合,多くの場合については,ここに書かれたパラメータで発注を行えば問題ありません.まずはここに書かれたパラメータの意味を理解できるようにしましょう.

オーソドックスな発注パラメータ

  • Material:FR-4

  • Layer:2(両面基板)

  • Dimensions:基板最大外形を指定

elecrowをはじめ多くの業者では100x100か100x150までが安く,それを超えると急に高くなるのでなるべくその範囲内で設計する
  • PCB Qty:5 or 10

10でも値段が変わらないなら10
失敗するのが怖ければ増やす(最低限必要な数*2くらい)
  • Different PCB Design:1

  • PCB Thickness:1.6[mm]

  • PCB Color / Solder Mask:Green

  • Silkscreen:White

  • Surface Finish:HASL

  • Copper Weight:1[oz]

  • PCB Stencil:No

表面実装部品が多ければつける
サイズは片面実装であれば基板面積より大きいくらい両面ならその2倍

その他指定のないパラメータは未指定 or 無指定

基板発注時のパラメータ

Material(基板材質)(ElecrowのPCB-Mでは指定不可)

色々な材質がありますが基本的にはFR-4を選べば問題ありません.多層基板(4層以上)の場合は材質を変更したほうがいいこともあります.高周波基板など,無線関係の場合はそれに適した素材を選択します.高発熱部品は実装する基板を分けてその部分だけアルミ基板で作ることもあります.

Layer(層数)

片面基板は1両面基板は2,多層基板は2以上の任意の数を設定します.ここでいう両面基板とは配線レイヤが両面であるという意味であり実装面が両面である必要はありませんつまり部品は表面だけに付くけど裏面は配線が通ってるというケースは2層になります.

Dimensions(寸法)

基板外形寸法(単位は[mm])を設定します.設定値は最大寸法(基板を囲む最小の長方形の縦と横の寸法,円形の場合は直径)を指定します.

PCB Qty (Quantity)(製造枚数)

小ロットから大量生産まで選択できます.Elecrowの場合,最小料金(2021.10時点では4.9USD)で製造可能な枚数は5か10までです.10にしても値段が変わらない場合は10にすることをお勧めします.それを超えると枚数に応じて料金が加算されます.

Different PCB Design(異種面付けの種類数)

1枚の基板上にVカット(簡単に切り離すことができる切り込み)を入れて,複数の基板を1枚の基板として製造する場合,何種類の基板が含まれているかを設定します.例えば,

  • 1枚の基板を4分割して全て同じ基板を4つ乗せる場合は「1」

  • 1枚の基板を2分割して違う基板を1つずつ乗せる場合は「2」

  • 1枚の基板を4分割して2種類の違う基板を2つずつ乗せる場合は「2」

同様に基板の種類が増えるごとに料金加算されます.場合によっては,1枚の基板上に実装せず,異なる基板として実装したほう場安くなる場合があります.

また,Vカットは製造業者によってガーバーの指定や独自のルールがあるのでよく確認してください.なお,基板に切れ目を入れず自分でカットする場合は1でOKです.

※同種面付でも追加料金を取られる場合アリ

PCB Thickness(基板の板厚)

生基板・レジスト・シルクのすべてを含んだ基板の厚みを設定します.標準は1.6[mm]ですが,基板製造業者によっては0.6-2.5程度の範囲で任意に選択可能です.選択肢は基板材質によって変わるので注意してください.

PCB Color / Solder Mask(レジストの色)

基板表面に塗るレジストの色(つまり基板の色)を指定します.レジストははんだを弾く働きと基板表面を保護する働きがあります.昔は緑ばかりでしたが,最近では色が増えました(Elecrowでは2021.10現在,緑,赤,黄,青,白,黒,紫(追加料金),艶消し黒(追加料金)が選択可).仕上がりの安定性を考えれば緑が良いと思いますが,普段使う製品でも黒や白などの基板も多くなっています.好みで選択してください.

なお,PCのマザーボードやグラフィックボードのメイン基板は比較的(艶消しの)黒が多い印象です.

Silkscreen(シルクの色)(Elecrowでは指定不可)

レジストの上に印刷する文字や実装位置指示の色を指定します.レジスト同様に選択できる業者(ALLPCBとか)もあればレジストごとに決まっている業者(Elecrowとか)もあります.レジストと同色にすると当然見えないので,なるべくレジストに対して目立つ色で指定します.

Surface Finish(表面仕上げの種類)

基板の表面仕上げの種類を指定します.色々種類があるため,用途によって使い分けますが,一般的にはHASLを選択します.

一般的なものを下に挙げます(より詳しいものやマイナーなものはFusionのサイトが詳しい)

迷ったら...

  • SMD(表面実装)・狭小ピッチ部品・足無し部品がある場合(VQFP, QSOP, BGA, QFN)・・・ENIG or OSP

  • それ以外・・・HASL

を選択しましょう.RoHSと表記されているものはEUのRoHS指令に対応します.ここでは鉛フリーと同義と理解しておけば問題ない(はず)です.

Castellated Holes(端面スルーホール)

外形によって切断された形のスルーホール.詳細はこちらのサイトなどを参考にしてください.基板の端に例えば半円状のスルーホールがある場合などは指定します.Elecrowなど製造業者によっては有料オプションとなり別途指定が必要です.

Copper Weight(銅箔厚)

銅箔の厚さを変更できます.一般的には最外層の銅箔厚を指定します.この値を大きくとると銅箔が厚くなって同じ太さのパターンに流せる電流量が増えます.通常は1[oz]でOKですが,基板上に大電流を流す場合は検討が必要です.

多層基板の場合は内層の銅箔厚は固定の場合と別に指定する場合があります.

銅厚ごとの電流許容量はこのサイトなどを参考にしてください.

Gold Fingers(コネクタ部の金メッキ加工)(Elecrowでは指定不可)

基板端にある端子を金メッキで保護してパターンの剥がれを防止し,抜き差しによる端子摩耗への耐久性を向上させます.

例えば,グラフィックボードのPCI-E端子のイメージです.加工箇所については別途指定します.

PCB Stencil(メタルマスク)

手はんだではなく,リフローで実装する場合には基板表面にペーストはんだを塗布する必要があります.その際に必要となるメタルマスクを付属させるかどうか指定します.

有料ですが,基板と同時にしか注文できません.リフローで実装する可能性がある場合は指定しておいて下さい.

基板と同じガーバーを使いますが,発注前にマスク用のデータが入っているか確認しておきましょう.

注文する際に指定すると,業者によっては枠の有無とサイズを聞いてくる場合があるので,聞かれたら指定する.

機械で印刷する場合は枠ありで機械が対応するサイズとする

手動印刷であれば基板(両面実装の場合は基板サイズの倍)より少し大きいサイズの枠なしで問題ない

製造期間について

Elecrowの場合,PCB-Mの製造期間は通常4-7 working daysとなります.

どうしても急ぐ場合は,オプションでRush 24hやRush 48hを選択することができますが,費用がかかりますので通常は指定しません.

発送方法について

Elecrowなどの外国の業者に発注を行う場合,発送方法によって到着までの時間と合計金額が大きく変わるので注意してください.業者によっては指定できたりできなかったりします.

Elecrowでは料金と時間のバランスが良いANA/OCSがおススメです.マイスターではこの発送方法を指定します.発送から到着までは約1週間です.

【重要】春節について

中国では,毎年1月中旬~2月中旬に春節(旧正月)があります.春節は太陰暦で決まるため,太陽暦での日付は毎年変わります.春節の約2週間は企業は休暇となり,基板製造も春節の1週間ほど前から受付を停止します(正確には,春節後のオーダーとして受け付けられてしまいます).具体的な日付は春節が近づいたらElecrowのWebサイトに掲載されますが,毎年,春節がマイスターの開発の最終段階と重なるため,基板発注はできる限り年内に行うことが重要です.